不器用人の地球適応記

不器用人の地球適応記

不器用人、地球適応の訓練課程を綴ります

池谷裕二『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版―本当の自分を知る練習問題80―』

f:id:b_bukimi:20181114162756p:plain

 

先日「どうして自分が試合を観たり、選手を応援すると悪い結果になるんだろう」と思ってしまうのか調べた中で、「認知バイアス」という言葉が印象に残りました。

以前から心の働きについて関心を持っていたこともあり、今回ぜひ本書を読んでみようと思い立った次第です。

 

 

bukiyoooob.hatenablog.com

 

 

まず「認知バイアス」とは、という点からおさらい。

本書によれば、認知バイアスとは「思考や判断のクセ

認知バイアスのおかげで私達は「反射的解釈が正確かつ迅速になり、生きるのが楽になる」。つまり脳の成熟による、理解の省エネ・スマート化と言えるでしょう。

しかし認知バイアスがいつでも正確に物事を捉えられるわけではありません。特殊な条件の下、間違った判断を下すことも事実です。

 

本書では様々な認知バイアスが簡単なクイズとともに、ドリル風に解説なされています。

その中から一例を感謝と敬意とともにお借りして。

 

前評判の高かった映画のチケットを1500円で買いました。
ところが公開後、映画の評判はさんざんで、あなたのテイストに合わないものだとわかりました。
さて、どちらの行動をとる人が多いでしょうか。

 

①それでも映画を見に行く
②映画を見に行くのをやめる

 

引用:池谷裕二『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版―本当の自分を知る練習問題80―』講談社(2016)

 

 

.........

答えは①を選ぶ人が多いそうです。

どういったバイアスが働くのか等、詳しい解説はぜひ、本書をお読みいただければと存じます。

 

 

さて、この例を「合理的」に考えれば、自分のテイストに合わない映画を見ることで

①それでも見る→1500円時間の損失

②見るのをやめる→1500円の損失

であるから、より損失の少ない②を選択する方がスマートであるというのです。

 

それを聞いても、私、なかなか得心がゆきません。

いや、勿論「合理的」に捉えれば、②を選択する方が賢いというのは理解できます。

しかし「柔軟性」を欠くの一言。上記には「損失」の観点はあっても、「得るもの」という観点が欠落していると主張します。

確かに映画の内容自体はつまらないものかもしれない。

それでも、そのツマラナサは話の種になる。映像表現や舞台美術は感性の肥しになるかも。

 

何に価値を見出すのかは人それぞれ。

合理あるいは効率の下、冷やかに切り捨てるのは「人間的」ではないのではないかと思うのです。

(なーんて「得るもの」という観点から、映画を見ない時間を有意義に使えばいいだろうと言われれば、まあそうだね...としか返せないんですが...)

 

本書ではこうして人間が物事を認知する上で、無意識に挟まれる偏向を数多く取り上げています。

多くはそういったバイアスに対して、そんなバイアスが働くんだ。誤った解釈に気をつけよう。と自省するばかり。

しかし中には上記に挙げたように、(個人的に)納得のいかないバイアスもあるものです。人間、そんなに合理的じゃないよ~!

 

合理に食い下がるのも、人間のあさましさであり、いじらしさではないでしょうか?

筆者も認知バイアスを知ることは「人間って案外とかわいいなと思えてくる」ことと述べています。

 

 

認知バイアス

反射的な判断は生きることをスマートにしてくれる一方で、誤った解釈によって偏見や無駄な軋轢を生むこともあります。

筆者のねらいは本書によって、読者が「偏見に気づくこと」。「脳のクセを知ることで、余計な衝突を避けること」。「自分・相手に対して寛容になること」だと思います。

 

自分の思考は脳の働きによって決定されていることを改めて認識し、感情から一歩下がって冷静でいたい半面、人間らしさは失いたくない。...ムズカシイナ。

それでも一人ひとりが脳のクセをほんの少しでも知っていたら、お互いもう少しやさしくなれるのかな。

 

―――

 池谷裕二『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版―本当の自分を知る練習問題80―』講談社

2016年 1月20日 第1刷発行